にんげんしっかく

　「やぎゅ、今日泊めて、キスしてあげるから」
　またですか、と柳生は俺を咎めながらも眉を顰める様子はない。俺は知っている、依頼を断れない柳生はそれでもあまり気乗りしないときは右眉を少し顰めて眼鏡をくいと上げる。
　「太宰かぶれですか。今時大庭葉蔵は流行りませんよ」
　「俺は柳生をポイしたりしないぜよ」
　知っとる？俺、部活終わって暇な時は家でやることないきに、数学と理科一生懸命勉強してたんじゃ。文理分けんとき柳生と一緒におりたかったし。
　そうおっしゃる割には工業の方に見学に行ったりしてたみたいですけど。理系に決めた時もまたいつもの気まぐれかと思ったものです。
　それはあれじゃ、工業行く素振りでも見せてみたらお前さんがやきもち妬いてくれるかのと試したからやきに。
　「でも仁王君、あなた、音楽の成績は普通に悪かったでしょう。おっしゃってくれたら歌位テスト前に教えて差し上げたのに。あなた、歌自体は上手いのですから」
　「柳生にワンツーマンで歌なんか教わったら、俺勃っちゃう」
　柳生の声はすごい。耳元で名前を呼ばれただけで勃起するし、少し叱られたらもう完勃ち、吐息をはいたらそれだけで俺はイける。高三の時に、柳生の勉強が忙しくて構って貰えなくなってどうしようもなくむらむらして初めて童貞を捨てた時（それまでは柳生に尻に突っ込まれるエッチしかしたことがなかった）それを知った柳生の鬼畜な声は、聴いただけで全身の精子が出そうになった。
　「やぎゅ、今日は授業早よ終わるんじゃろ？」
　「ええ、講義だけで実習はありませんから」
　「なら焼き肉行かん？キスしてあげるから」


柳生…医学部生
仁王…看護系の学部
柳生は将来的に実家の医者になって、仁王はそこの看護師
柳生は跡取りなので嫁を貰い（仁王の紹介）、家庭を持つ一方で独身の仁王との関係を密かに続ける という設定